我慢しないで人は辞める|愛想を尽かされたことに気づかぬ経営者

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さようなら

退職者に向けた

我慢できる人だと思っていたのになぁ。

の言葉に対するその退職者の上司が発したのは

我慢する必要なんて無いんですよ。

でした。

正しくその通り。

我慢し続ける理由なんて本当に全く無いんです。

退職者を見送る風景より

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必要ない我慢

我慢しないで人は辞める

これを

我慢できないで人は辞める

と書かなかったことには意味があります。

一般に職場を去る人がいると、「我慢が出来ないから辞めた」と評されることが多いと思います。所謂いわゆる、組織防衛的観点もあるのでしょうけれども、実際のところ我慢しないで辞めていることが多いのではないでしょうか。

時代の変化

年功序列制度が整い、経営者が従業員全員の生活を看ることを自分の責任と信じていた時代には、それこそ辞める人間は我慢が出来ずに辞めたと評されても仕方が無い部分が多かったかと思います。

経済成長も続き、年功序列で給与が右肩上がりで推移することに疑いがなく、雇用の確保も前提になっていました。その時、既存のレールから外れるのは、勿体もったい無いことであり、離脱する人間は、こらしょうがないと言う認識があっても不思議ではない背景がありました。確かに事実その場合も多かったことでしょう。

我慢する意味

当時は、我慢することに意味がありました。一方、現代では、その我慢に意味が失われています。それでは、現代において、人が我慢して働くとしたら、何を必要とするのでしょうか。

当たり前ですが、それは「かつては有ったもの」に相当するものを用意することです。具体的には、雇用の安定的な確保、給与の見通しの明確さ、事業の安定性・将来性などです。もちろんそれが従業員にとって絵に描いた餅では意味がありません。それが従業員によって、信頼に足るものであると認識されて初めて、辛抱して働くようになるのです。

経営者が何を提供しても従業員が信頼しなければ意味がありません。無いものと同じです。空手形からてがたをいくら切っても意味がありません。大切なことは、経営者、経営陣、時に管理職が、どこまで従業員一般に信頼されているかが重要なのです。

必要なのは行いであって言葉では無い

美辞麗句びじれいくつらねた経営理念を掲げても、従業員が見ているのは経営者の行動ですから、斉唱し徹底しても、経営者自らが、それを信じそれに基づいて行動していなければ意味が無いです。経営者の言葉ではなく、経営者自身の行動が求められます。

一般的に、言葉とおこないが異なるのは、立派な経営理念や企業理念を掲げている会社に多い気がします。その理念が実際に効果を発揮していないことが多いということです。

経営者よ、結果に忠実であれ!

理念の効果に対する指標ベンチマークは、退職者数と離職率です。

経営者が考えているほど、むをない退職は多くありません。もっともらしい説明が有ったとしても、ほとんどの場合は事実とは異なるのではないでしょうか。

従業員にとって、転職活動は、それなりに労力と手間がかかりますから、出来る限りは避けたいのが普通です。それにもかかわらず、退社を決断するのは、余程のことだと言えます。

退職者が多いということは、そういう決断をした人が何人も過去に居たということであるわけです。三行半みくだりはんを何人からも突きつけられていて、抜本的改革に乗り出さないとしたら、経営者としては相当怠慢だと言えます。

離職率の高さは企業経営の有力なベンチマーク

企業風土、職場の雰囲気、業務の仕組み、待遇、会社の将来性など、何かに大きな問題がなければ、簡単には退社しないはずです。結局は、我慢する必然性が無いから退社したのです。

離職者は総じて、会社に対して否定的であり、離職者の数だけアンチを増やしたと考えるべきです。

経営者は結果に厳しくならなければなりません。改善すべき問題を先送りした結果が、退職者数となって跳ね返って来ているのです。入社してきた従業員を退社に追い込むのは、自らが望んだかと望まなかったかにかかわらず、大きな罪です。

それでも俺は10年以上もこうしてやってこられたんだ。

こんな言葉をつぶやいた経営者の方が居られるかもしれません。それに対し「この先を同じようにやって行くことが出来るのですか。」と反問いたします。恐らくは、そう口にした経営者さん本人も、既に自らの会社のほころを、少なくともある程度は、理解、或いは感じているはずだからです。これを何とかするためには、経営者自身に強い決意と信念が必要です。

多くの場合、自身が思っている程、常日頃、従業員に説いている程には、結果に忠実でないのが経営者の真の姿です。自戒が必要です。


[以下追記 平成28年11月27日]

従業員に愛されなかった会社は、崩れ出したら一気に瓦解がかいします。風向きが変われば、外もうちも敵だらけになるからです。

従業員も含め、会社に関わるもの全てが潜在的な顧客であることは、¶ 面接に来た人はお客様|隠れた潜在顧客を見落とすな で指摘しています。風向き次第で、潜在的顧客は味方にも敵にもなり得るということです。利害関係者ステイクホールダーに愛される会社作りの大切さを、経営者としては改めて認識しておきたいところです。