夫婦が同じ会社に居ては問題なのか?|情報共有の疑念

スポンサーリンク
同じ職場の夫婦

社内恋愛、社内結婚若しくは配偶者の居る会社への入社の是非、これらはしばしば考えられることです。その是非は環境によるところが大きいでしょう。

様々な要因が絡み合うので、一概には言えません。社内結婚を奨励する企業※がある一方で、社内恋愛を禁止しているところもあるようです。

※ 以前に日本電産の永守重信さんの本で、社内結婚を奨励していると書かれていました。(現在については定かではありません。)

また、個人的にも地方の会社で、社内恋愛を奨励していて、社内名簿に携帯電話番号を掲載し配布していたところがありました。個人情報保護の絡みで、掲載を取り止める話になったところ、社長の鶴の一声

それではデートに誘えないだろう。

で不掲載は任意となりました。(デフォルトは掲載で不掲載の選択肢有りということです。)

スポンサーリンク

同じ会社に夫婦が勤務していることの是非

同じ社内で夫婦が勤務していると弊害が起こることがあります。実際の例を挙げてみましょう。

IT系の企業で、SI事業者を標榜している中小企業です。

管理部長が妻、数ある事業部の中の或る事業部長の下に課長おり、その課長が管理部長の夫であるという状況が有りました。妻は所謂、姉さん女房で、夫は妻の紹介でこの会社に就職しました。

創業社長はもと大手外資系コンピュータ会社出身で、管理部長はそこでの部下であったという背景があるので、社長と管理部長はかなり近しい関係でした。ちなみに夫婦の勤務地は別々です。

そのような状況下、くだんの課長の上司である事業部長から話を聞きました。

ないがしろにされた事業部長の嘆き

事業部長によると、

どうも部下の課長と打ち合わせした内容が、その妻の管理部長経由で社長の耳に入っているみたいだ。

打ち合わせをしても内容が社長に筒抜けではやりにくい。

こんな話でした。

いずれは社長に話をするにしても叩き台の段階で伝わること、話を通すにしても、御膳立ても必要であり、情報だけが先に伝わるのは困るなどとこぼしておりました。

実務上の障害と背任行為

事業部長の嘆きは当然です。そして、そもそもの報告系統レポートラインが無視されていることは大きな問題です。

本来、課長は、事業部長との話を、妻である管理部長に漏らしてはいけません。レポートラインの問題も去ることながら、未だ揉んでいる段階の構想が、最終的な決裁権者である社長に伝わることも好ましくないでしょう。社長承認を得るための方策も含め、社長への情報開示は、事業部長の采配下で行われる筈のものです。それをこの課長はあろうことか漏らリークしているのです。

この課長の行為は、事業部長への背任行為とも言え、課長と事業部長との信頼関係を揺るがすものです。引いては、このような状況を生み出す人事を行っている社長への信頼の揺らぎに繋がります。

この場合では、結果として事業部長が

同じ職場に夫婦がいるのはおかしいよな。

という言葉を残し、社長と会社に対する強い不信の念を持って退職し、同業他社へ行きました。

周りは許しているようでいて許していない

この場合、偶々たまたま、課長の職務権限に関する自覚が足りなったのでしょうか。夫である課長に十分な自覚が有れば、問題は起こらなかったのでしょうか。

情報共有の疑念

この状況下では、いずれ問題は起こったでしょう。それは、夫婦は、夫婦であるということで、情報が常に共有されていると看做みなされ、周囲一般は不信を持つからです。

守秘義務があるからとか、聞いていないよ、知らないよと言っていても、信用されないでしょう。表面上、いくら聞いてないことを標榜し、周囲がそれを認めてくれているように見えても、本音では、実際は知っていると思っているものです。知らないふりはいくらでも出来るからです。

実際に、報酬の問題やリストラの問題など自分の利害に強くかかわる問題が出たときに、夫婦が配偶者に対し、他の人と公平に振る舞えると思えますか。中にはフェアプレイを信念として持ち、フェアに振る舞える人はいるでしょう。それでも周囲一般の疑いは無くならないものです。

一定規模に達した企業では、外観法理ではありませんが、外側から推定される事実関係に照らし、利害関係などを念頭に置き、人事政策を行う必要があるのです。