課題解決の手掛かり|前提条件を深掘りする

前提条件を深掘りする

論理的には正しいのに上手く行かないことが起こるのは、論理の前提条件が備えられていないことが原因であると ¶ 不明確な前提条件|論理的に正しいのに理論が機能しない理由 でお話ししました。

もっともと思われる事柄が実際には上手く行かない場合には、論理的な正しさを再検証するだけでなく、前提条件に誤りや抜け、見落としが無いかを疑ってみることが解決の糸口になるでしょう。

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思い付きからはじまり

企業でのコスト削減を題材にお話を進めたいと思います。

卑近な例をもちいますので、馬鹿馬鹿しく感じられるかもしれませんが、事柄そのものでは無く、考え方の筋道に意識を払ってください。

具体的な話の方が分かりやすいのでケーススタディの方法を採ります。

燃料費削減の取り組み

背景

営業活動に主として社用車を使用している企業、仮に甲社があるとしましょう。

社用車の燃料費がかさむので、ガソリン代を倹約したいと考えています。

甲社の営業範囲は社屋しゃおくのある都市の近隣です。幸い社屋のある市内に一番安いガソリンスタンドがありました。営業努力の賜物たまものか、常にそのスタンドは最安値を維持しておりました。

そこでふとした思い付きから社内の取り決めとして、社用車の給油は必ずそのスタンドを利用することとしました。

試行前に

如何でしょう。燃料費節減は上手く行くでしょうか。

ところで、この最も安いという特定のスタンドでガソリンを入れるという決めごとで前提条件としていることは何でしょうか。

様々な弊害が発生した後、つまり事後であれば、生じた現象から突き止めることができます。

しかしながら、可能なら事前の考察でなんとかしたいものです。

では改めて、

前提条件を疑う

前提条件を一言で表現すると、ガソリン代以外の給油コストはゼロであるというものです。

単純にガソリンの販売価格を比較して、最安値のガソリンスタンドを指定したとすれば、暗黙のうちにガソリン代以外の給油コストをゼロとして捨象しゃしょうすることを前提にしたことになります。

これではあまりにも大雑把おおざっぱな取り決めです。

ここが問題ならガソリン代以外の給油コストを見直してみれば好いということになるでしょう。ぐに思いつくのは、スタンドまでのガソリン代ですね。

ガソリン代以外の給油コスト

仮にガソリンスタンドが甲社駐車場の至近距離にあり、給油に赴く際の燃料費は問題にならないとしたらどうでしょうか。これならスタンドまでのガソリン代は捨象しても差し支えなさそうです。

ところが、これまで複数の目的地が有った際は、目的地から目的地へ直行していたところ、途中で給油が必要になった場合、指定スタンドで給油するためには、一度、甲社近傍きんぼうまで戻ってこなければならないという事態が生じます。

これを実行すると、走行距離が延びてガソリン消費量が増えるだけでなく、立ち寄るための時間も損失となります。

こうして見てくると、指定スタンドでの給油は厳格に遵守すべき規則とはせず、可能なら範囲で行うという努力義務くらいにしておいた方が目的に適うのではないかと考えることもできるでしょう。※

※ 他の選択肢として、事前にルートを確定し、指定スタンドで給油するか、他スタンドで給油するか決めておくこともできるでしょう。また、一日の走行距離にも依りますが、出発前に必ず満タンして出かけるという取り決めも可能でしょう。前者では管理コスト、後者ではスタンドの開店時間と甲社の営業開始時間の兼ね合いが問題になるかもしれません。

試行結果

指定スタンドを設けることにしましたが、これだけではガソリン代以外の給油コストをゼロと見るという前提条件があることでした。そこで前提条件を深掘りして修正し、規則では無く努力目標としました。

ところが、残念ながら実効性が無かったとしましょう。要するに、取り決めをしたところが燃料費削減は実現しなかったということです。

見極め

指定ガソリンスタンドで給油することが規則では無く、努力目標だった為なのか、指定ガソリンスタンドで給油する全体に対する比率があまり増えなかったのです。

努力目標とした今回の取り組みは、それが本質的に機能するのか機能しないのかを見極めるために、二つの観点から考える必要があるでしょう。

空論くうろんか運用か

一つは、実際に指定ガソリンスタンドで給油すべきだった量が、給油全体量に対しどれだけの比率を占めているのか、もう一つは、理論値である指定ガソリンスタンドで給油すべき量の中、実際に指定ガソリンスタンドで給油された量の割合です。

仮に、上手く行かなかった理由が、指定スタンドで給油すべきだった量の全体量に対する比率が、あまり高く無かったということであれば、そもそもの取り決め自体が有効では無かった、つまり空論くうろんだったことになります。

つまり、例えば、目的地から目的地への移動途中に給油するのがほとんどであり、指定スタンドで給油する機会がほとんど無かった場合です。

その場合は、引き続き燃料費削減を目指すのであれば他の施策しさくに拠ることになるでしょう。

一方で、指定スタンドで給油すべき量が高い比率を占めていたのにもかかわらず、取り決めが守られず、指定ガソリンスタンド以外の給油量が多いのであれば、取り決めの徹底を図る為に運用方法を見直すなど改めて取り決めをし進めることが考えられます。

試行前にできること

ここまで取り決めを試行するのに暗黙裡あんもくりに前提条件としていたことは、

  • 指定ガソリンスタンドを利用すべき給油量が実効性のある水準(比率)で存在すること
  • 取り決めが実効性がある程度の水準で遵守されること

この二つです。

つまり、最初からこれらの前提条件を明確に認識し、的確に精査、吟味できていれば、試行せずとも有効な施策を講じることができたとも言えます。つまり、当初、ガソリン代以外の給油コストはゼロという暗黙の前提を見い出し、規則では無くて努力義務としたように対策が講じられたであろうということです。

要するに有効な仮説を立てられていればということです。

ここまで考察した過程を振り返ってみると、有効な仮説を立てるための手掛かりとして前提条件を正確に把握することが有効であるということが分かるでしょう。

先の ¶ 試行前にの下線部で指摘した「事後であれば、生じた現象から突き止めることができます」はこの意味です。

フィードバック

全給油量の中、指定ガソリンスタンドで実際に給油すべきだった量の比率のような試行することで採取できるデータがあり、やってみたからこそ分析可能となる場合もあります。

しかしながら、事前の試行段階で、全給油の中で指定ガソリンスタンドを実際上使用すべき場合の比率が実効性がある程度の水準で存在するという仮説のもとに行っていることを意識しているのといないのとでは、データの採取を含め、試行のあり方そのものも変わってくるでしょう。

有効な仮説、或いは的確な課題意識があるのと無いのとでは雲泥の差ということです。

その手掛かりとして前提条件を検証するということは極めて有効な手立てなのです。


今回は、謂わば ¶ 課題解決の手掛かり|全体を意識し俯瞰する でお話するための下拵えです。