質問に答えてください!
顧客からの質問に答えることは思っているよりも簡単ではないようです。
買い物の際などにしばしば接客を観察しているのですが、顧客の質問に答えていない店員が散見されます。
或るレコード店(CD店)で、
フィリップスというレーベルは無くなったのですか?
の質問に対しての店員は、
入荷したところを見たことがありません。
の答えでした。
一見すると正しい応対のようですが、顧客が知りたかったのはあくまでもフィリップスレーベルがどうなったかだとしたらどうでしょう。
ぶらりと店内を見まわして、フィリップスのCDが見当たらなかったので、フィリップスの現在を知りたくなったのです。
質問の答えを知らないならば、正しい答えは、
存じません。
であって、その他は付随情報に過ぎません。従って同じことを伝えるにも「存じませんが、入荷したところを見たことは有りません」と答えれば親切となるでしょう。
文意に即した回答
注意が必要なことは、仮に質問に対する答えを知らなくても、質問には正しく答えられると言うことです。
存じませんは正しい回答で、場合によっては、他の店員に確認するなどの手立てが考えられるでしょう。また、存じませんと答えた上で、何か商品をお探しですかと質問の意図を探ることも可能でしょう。
勿論、顧客の表現が曖昧で、在庫を聞きたい場合に、同様の質問がなされる場合があるかもしれません。
それが明確な場合には、顧客の意思に応えることが望まれるかもしれませんが、確信が無い場合には、文意に即した回答をした方が良いでしょう。
文意に即した回答に苛立つ顧客は少ないと考えられますが、文意に即さない回答は苛立つだけでなく、回答者そのものが見切られてしまう恐れがあるからです。
顧客に見切られた店員
或る鮮魚店です。
これは生で食べられますか。
と顧客の1人が店員に質問していました。
すると店員は、
食べられますが、骨が有るかもしれないし、筋もありますから加熱した方が無難です。
更に
生食なら、ほぐしてある方をお勧めします。
と答えていました。
この時、傍で見ていて、質問者である顧客は、手にした柵にこだわりがあり、その柵を食べたいのだと感じられておりましたから、店員の回答には強い違和感を覚えました。
この質問者にとっては、どう食べれば良いかが知りたいことであって、他の選択肢には全く興味を示していないからです。
この場合には先程の例と異なり、質問に対する答えは「食べられます」では十分では無いのです。
そして更に言えば、応対を面倒くさがっているようにすら感じとられました。
顧客の想いは強く別の店員へ
するとその顧客は、隣の店員に改めて同じ質問をしたのです。
その店員は、顧客と初めに質問を受けた店員とのやり取りを見ており、顧客の意図を明確に理解していたのでしょう。
顧客が手にした柵を、生食するための手立てを懇切丁寧に説明していました。
その顧客が、柵を手にして満足そうに帰って行ったことは言うまでも有りません。
先ずは質問に答えること
大切なことは、先ず、質問に答えることです。追加情報は二の次です。
例えば、鮪の話では、生食できることと食べ方が質問の答えであって、他の選択肢は追加情報になります。
生半可な判断で、質問と異なる説明を受ければ、顧客は、自分の言ったことを理解してくれないと感じます。
きちんと質問に答えているならば、顧客は仮に自分が望む回答を得られなかったとしても、自分が質問の仕方が間違っていたとして、改めて質問し直すことでしょう。
ところが、質問の内容と異なる回答をされれば、店員は、理解力不足や能力不足を疑われます。
最悪の場合には、人の話を聞いていないと解されてしまうかもしれません。
一段下に見られたら売り子としては仕舞い
顧客は必要とあれば、一歩高いところに立って、店員から情報を引き出すといった形にもなりかねません。
売り子である店員は、少なくとも顧客よりは扱っている品物に対して専門性が高いことが期待され、少なくとも対等の立場で対話ができることが望まれます。
この店員さんは、コミュニケーション能力が無いから、私が情報を上手く引き出さなければ・・・
こんな思いを抱かれてしまうような店員では、
つまり、売れた場合でも、その店員が居るから売れたのではなく、放っておいても売れたと言うことです。
きちんと質問に答えるには
きちんと質問に答えることが、当たり前のようでいてできないのは、傾聴ができないからです。
話を好い加減にしか聞いていないからです。或いは聞いていても相手を軽んじているからです。
誠実な関心
誠実な関心を相手に向ける。
或る会社の社長がしばしば口にしていた言葉ですが、コミュニケーションの要諦を押さえた
傾聴するための極意もここにあります。