経済至上主義が禁忌に手を染める|そして誰も信じられない

スポンサーリンク
現金

これまで経済至上主義の批判記事を何度か書いてきました。

などです。

自身が経済至上主義に立つという意味では、恰も効率が良い考え方を採用しているだけに感じられるかもしれません。

ところが、自身を取り巻く人々が経済至上主義に憑りつかれているということをきちんと認識すれば、それが如何に恐ろしいことかきっと判ることでしょう。

スポンサーリンク

経済効率優先の土壌を作ってはいけない

本題に入る前に、以前にラーメン店経営について色々と調べていた時に見つけた話を紹介します。

出所が定かではありませんが、一部では有名な話のようです。

実話かどうかは別として今回の主題について示唆に富みます。

あるラーメン店。そこは行列のできる人気店として有名だった。

しかしそこのラーメンは、化学調味料たっぷりのスープに、豚の脂が一センチも膜をはって浮いている。

さらに、冬場でもさほど湯気が立たない。湯気は脂の膜が包んでしまうので立ちにくくなっているわけだ。

常連の客は、ニンニクや胡椒を鼻がまがるほどぶちこみ、汗をだらだら垂らして飲み込んでいく。

主人のおじさんは顔色の悪くなった常連客と並んで記念写真を撮る事がある。壁に飾られたポラロイド写真は既に五十枚以上はあった。

「みんな死んじまった。」おじさんは真新しい写真を指さした。

「この人は肝臓ぶっこわして、ついこないだおだぶつだ。」

「こっちの人は入院してるが病院抜け出してウチに食いに来てるから、もうじきだろうな。 ウチみてえな高カロリー 高蛋白 食塩過多 化学調味料過多のラーメンを週に四回も五回も食ってみろ 尻からラードが出るぜ。脂肪肝だって診断されたり身体に蕁麻疹が出たりそれでも懲りずに食いに来続ける奴は写真に残す事にしている。」

「これだって全部じゃない 俺の知らねえとこで死んじまってる奴もたくさんいるわけだ。」

おじさんはさらに続けた「それでもな この辺じゃこういう味じゃないと商売にならねえんだ。 手間隙かけていいもん作っても味にヒステリーがないと売れない。 」

「身体に良くて美味いものを目指したこともあったが それじゃ店がつぶれちまう。結局 毒じゃなきゃ美味いって言われないんだ。憶えてももらえないんだよな。」

「変な連中だよまったく。銭払ってまで毒食いたがるんだから」

おじさんは指に挟んでいた煙草を床に捨て最後に呟いた。

「外食してもラーメンだけはよせよ」

書式を外したテキストの状態で掲載します。読み易くするために改行を適宜入れ、長い台詞を適宜切っています。

経済至上主義への敗北

ラーメン店主である「主人のおじさん」は、元々は経済至上主義的な価値観とは異なる自身の価値観を持っています。

話の中で、経済効率と自身の倫理観に揺れた過去について触れています。

ところが、手間暇かけていいもん作っても味にヒステリーがないと売れないと最終的には自身の倫理観を曲げてしまいました。それは自身の倫理観に従っていると店がつぶれてしまうからです。

一見すると、食べて行くためには致し方無いと擁護する向きもあるでしょう。

ところがここに、毒と知りつつ、中毒性があることを知りつつ、金儲けのためにラーメンを作り続けているという現実があります。

生きていくために、致し方無いことなのでしょうか。

生きていくためだから仕方が無い!?

生きていくためだから仕方が無いではないか。今回指摘したいことは、そう云った感性に対する危険性です。

容認する考え方の背景には、少なからず自分も「主人のおじさん」立場であれば、同じことをするだろう(しただろう)という感覚の存在があるでしょう。

自分も同じ穴の狢だから許せる。勿論、自分だけ棚上げして人を裁くよりは幾分上等かもしれませんが、経済性を優位に置くことは肯ん是じえません。

金儲けと仕事を明確に区別することや金儲けはそれだけが目的となると卑しくなることを指摘し続けているのは、経済至上主義的な価値観の危険性を強く感じるからです。(¶ 仕事は金儲けではない!

自身が経済効率を優位に置くこと、金儲けを優先する発想を持つことが、自分を取り巻く環境の金儲け優先に少なからず拍車をかけます。

ラーメンは、一般に健康的でないというイメージを持たれがちなので、それ程深刻に感じられない嫌いがあるかもしれません。

高い倫理観が求められる分野でも蝕まれる

これが医療の話だったらどうでしょうか。

患者にすぐ直る治療を施したら、病院が潰れてしまうから、効きの悪い薬を処方したとしたら・・・

医師について高い倫理観を期待するのは、患者が勝手に行っていることで、医師にも経済効率の問題は起こり得るのです。

直ぐに治る患者の治療を意図的に長引かせたり、薬を大量に処方する為に悪化する薬を敢えて処方したとしたら・・・

医師が生きていくためだから仕方が無い。そうは思わないでしょう。

経済効率優先の土壌が育むもの

医師に対する医療に対する信頼を維持するためにも、生きていくためだから仕方が無いと感じてはいけないのです。

経済効率を優先することは、徐々に医師の例でも、「そういうこともあるよね」と容認する感覚を醸成してしまいます。

ある程度は容認されるだろうと感じることで、禁忌と感じられていたことに手を染めるきっかけを作ってしまうのです。

経済至上主義から自律した倫理観をきちんと確立し、維持していくことが現代社会の喫緊の重要課題と言えるでしょう。

さもないと社会全体が個々人の私利のために最適化しようとし、利害のメカニズム以外は誰も信じられない状態に陥っていくからなのです。

スポンサーリンク
関連コンテンツもどうぞお読みください