美味しい店だったのに経営には苦労していた
かつて最寄の駅前にラーメン店が有りました。お客さんはそこそこ入っていました。記憶ではラーメンは500円、チャーシュー麺は750円でした。味は豚骨醤油で、なかなか美味しい。白タオルを鉢巻にして、
時折、食べに行っていたところ、なんとなく話しかけやすかったのか、店主がいろいろと話してくれるようになりました。なかなか経営が厳しいとのことでした。
仇 になったサービスデー
毎週水曜日に、サービスデーを
売上が伸びないので、少しでも多く稼ぐためにお店を長時間営業しているとのことでした。年齢も恐らく50代だったでしょう。体力勝負のラーメン店を1人で切り回すのは大変です。体力的にもきつそうでした。無理に働きすぎて、体を壊したらどうするのだろうと気がかりでした。
お客さんが入っても儲からなかった2つの理由
場所は悪くないし、お客さんの支持もそれなりにあるように見えるこのお店の採算が悪かったのは、2つの理由があると考えています。
高単価メニューの割高感の醸成
ひとつはサービスデーの存在です。サービスデーの問題は、まず、チャーシュー麺等の他のラーメンの値段が据え置きであることです。お客さんの目からみれば、そもそもがラーメン500円とチャーシュー麺750円との比較であるのに対し、サービスデーでは、ラーメン380円とチャーシュー麺750円との比較になります。すると普段よりチャーシュー麺に割高感が出てしまいます。
仮にチャーシュー麺を食べようと思って来ていても、今日は、コストパフォーマンスの良いラーメンにして、チャーシュー麺はまたの機会にしようという心理が働くのではないでしょうか。またの機会があれば良いのですが、実際のところはどうなのでしょう。
この辺りの感覚は、顧客層にも依存します。富裕層が顧客の中心ならば、金額よりも食べたいものを選んでくれることが多いでしょう。残念ながら、この店が在った場所は、庶民の街でした。
単品勝負の特性
スーパーマーケットなどのように、複数の品物を買って帰るのが大半の商売ならば、目玉商品を設け、ある品物の価格を極端に下げることにも意味があるでしょう。一方、ラーメンのように、ほとんどの人が1杯食べて帰るような品物では、目玉商品だけに集中してしまうのは当然です。
ラーメン専門店では、価格をメニュー全体でスライドさせなければ、期待するような効果は現れないでしょう。チャーシュー麺がラーメンと同じ120円引きの630円になっていれば、割高感はぐっと減退します。
サービスデーと来店周期
また、現状の価格ラーメン一杯500円で商売が厳しいと考えるのであれば、サービスデーは行っても、月1度くらいにし、通常価格の値下げを検討した方が良かったかもしれません。
それならば、週に1度訪れるてくれるお客さんは、月に1度はサービスデーに訪れたとしても、他の日は通常価格で食べてくれます。サービスデーが週に1度あると、通常価格でも来てくれる、いわばファンになっているお客さんにまで、その価格で提供することになるので、得べかりし利益を、相当分、逸失してしまいます。
満足できないチャーシュー麺
採算に合わない、もうひとつの原因はチャーシュー麺のチャーシューです。柔らかく美味しいので、チャーシュー自体は素晴らしいと思いました。しかしながら、チャーシュー麺を頼んだ時には、紙みたいに薄いチャーシューが数枚のっているだけだったのです。到底、250円の価格差に見合うとは思えませんでした。チャーシュー麺の利益率がいかに高かろうとも、注文してもらえなければ、利益は出ないのです。
満足しなければリピーターにはならない
基本は、高くても満足してくれる品物を提供することです。チャーシューを期待してチャーシュー麺を頼んだのに、肝心のチャーシューがペラペラでは、このお店でチャーシューを堪能する選択肢は無いことになります。
仮に原価が高いのであれば、相応の値段を付け、お客様が満足する商品を提供した方が良いのです。お客様には満足して帰ってもらうことが大切です。「高かったけれどもまた食べたい」という体験をしてもらうことが望ましいわけです。
中途半端に安くして満足されないチャーシュー麺を出すくらいならば、高くて満足度の高いチャーシュー麺を出した方が、リピーターは獲得できるのです。
満足してもらうこと無しに、リピートは望めません。
お客さんの満足する品目が売れていた
結局のところチャーシュー麺は満足の行かない品目なので、売れないため、客単価は上がりません。ラーメンがコストパフォーマンスが一番良いとお客さんに判断されるからです。もし値段が高くても満足度の高いチャーシュー麺であれば、それはそれで売れたと思います。
実際のところは、価格(実際には原価)と品質はトレードオフ、つまり一方を良くしようとすると、一方が悪くなる部分があるので、なかなか難しい問題ではあります。しかしながら、それを考える糸口をご提供できたのではないかと思います。