こだわりと効率|金儲けの行方

職人

効率化とはこだわりを捨てること。

効率化とこだわりを捨てることは必ずしも同義ではありませんが、効率化するために、こだわりを捨てなければならないことは多々あります。

過去に¶ 作り手を身近に感じることの大切さ|価値を届けるという矜持では、手仕事の油揚げが機械による大量生産に取って代わられる危機について触れました。

こだわりは独りよがりではありません。

独りよがりにならないためにも、こだわりの価値、こだわりによる付加価値を理解する顧客を育てることが大切であることを、¶ 客に迎合することで価値は損なわれていく|商業主義の末路 で菓子職人の話を題材にお話しました。

改めて今回は効率化によってこだわりがどのように失われてしまうかについてお話しましょう。

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金儲けの行方

現在、飲食業界では職人離れが進んでいます。

職人離れ

職人気質の弊害は、すでに何回か触れておりますが、端的に言うと頑固だったり、独善的だったりと、後から入ってきた人材を排除してしまう傾向が挙げられます。

自分のやり方、経験に固執するあまり、経営者の言うことを聞かない為、職人抜きで店舗を運営できないかと知恵を巡らすわけです。

その結果、あまり技術を要さないで、加工された食材に若干手を加えるだけで供する仕組みを作り上げている店舗が多くなっています。

「パートタイマーで十分な仕事に落とし込んだ」は複数店舗を経営する飲食店経営者の言葉です。

仕事!?

「パートタイマーで十分な仕事に落とし込む」とは、どのような意味を持つのでしょうか。

飲食店に於ける効率化とは、例えば調理の過程で、手を掛ければ実現可能な高水準から妥協点を見つけること。まあ好いだろうと思われる水準を探り当てることと云えるでしょう。

抽象的で分かりにくいかもしれないので、具体例を挙げます。

例えば出汁。自店舗で出汁をとれば、手間(人件費)も仕入れ(材料費)も必要です。

手作りに比べるとまあ風味は劣るが、妥協できない範囲ではないだろうと、工場で大量生産した出汁に置き換えると云った具合です。

専門業者が何社分もの分量の出汁を纏めて取れれば、規模の経済で当然に原価は下げられますが、質的にはこだわりの手仕事である出汁には劣ります。

金儲けを考えれば、効率的なのは、専門業者の(工場で)大量生産された出汁で商売することでしょう。

一方で、お店からは上等な出汁を取る技術が失われることを意味します。

この積み重ねこそがゆゆしきことなのです。

金儲け

飲食業界向けの或るスーパーマーケットの方の話ですが、或る洋食店に食事に言ったところ、自社で取り扱っている出来合いの冷凍ハンバーグの袋が見えたとのことです。

「商売上、うちが扱っている品物だから否定はできないが、店舗で料理として出す以上、せめてソースくらいは一手間掛けて作って欲しい」とのことでした。

現実として、出来合いの品をそのまま出す店も少なく無いということです。

このあたりの話までは想像に難しくないところではないでしょうか。

ところで、問題はここから先の話です。

仕事

そもそも調理の技術があり、水準の材料を使い、きちんと手間暇を掛ければ、遥かに美味しいもの※ができ上がります。

※ 技術も有り、水準の材料を使い、きちんと手間暇を掛けたとしてもそれを評価できる舌の持ち主が顧客には必要です。悲しいかな現在ではコンビニエンスストアを筆頭に添加物の多い食料品に舌を鈍化させられており、正当な評価を受けにくくなりつつあるという危機も存在します。或るラーメン店の店主曰く、近頃の若い子たちは、化調(化学調味料のこと)を入れていないとウマいと言ってくれないんだ」。こんなことも有ります。

ここからが問題です。諸々の費用が総計で二倍、三倍掛かったとしても、価格を二倍、三倍にするのは至難の業ということです。

例えば、今では国民食の一つとも言われるラーメンですが、地域にもよりますが、トッピングの無い普通盛りであれば一杯600円から800円くらいが一般的と思われているのではないでしょうか。

価格決定者は顧客

価格はお客が買いたい値段で決まります。

※ ¶ 原価を基礎に売価を決定するのは間違い|塩漬け株は無くせ で触れた通りです。

ところが、読者諸氏は、値段を決めるのはお店ではないかと思うかもしれません。

確かに実際の値段を決めるのは店舗ですが、需要曲線を描くのは顧客なのです。つまり、価格を決めることで販売数量が決まるということを表現したものなのです。

こだわり

料理人に限らず、ものづくり一般に携わる者は、そもそも自分が作り上げるものに思い入れがあり、こだわりがあるでしょう。

ところが、そのこだわりは、効率化にとっては邪魔ものです。

まあ好いかと妥協を繰り返すうちに、これまで培ってきた高い技術が無用の長物として忘れ去られて行きます。

まあまあの大量生産品が主流となり、本物が失われて行くのを口惜しく思うのは私だけではないと思うのですがいかがでしょうか。

本物と表現すると、一部の超一流と呼ばれているものを想像するかもしれません。

ところが、そう言った意味合いでは決してなく、単に然るべき技術で水準の材料を用い、必要な手間を掛けた品物ということです。

謂わばものづくりの裾野を含めた真摯に取り組む全体の意味です。

これを一言で表現すれば、「人が人のために仕事したもの」とでも申し上げれば好いでしょうか。

これは金儲けに主眼を置いた商売からは決して生まれてこないものです。

仕事とは常に実現すべき最高価値が想定されているからです。

仕事についての詳細は、 ¶ 仕事は金儲けではない! を是非ご覧いただきたいです。