自分を取り巻く生活環境。
より良い方向に変化するのならば、誰しも歓迎するところですが、必要としていたサービスが或る日突如として無くなってしまったらどうでしょうか。
モンスタークレーマーという言葉から、予てより危惧していたことがあります。
それはサービスの担い手が居なくなってしまうこと。
それが現実のものとなってしまいました。
サービスの担い手が全員退職
「 鳥取養護学校:看護師全員が一斉に辞職 – 毎日新聞 」で報道されています。
※ 記事内では「辞職」とありますが、正しい言葉遣いは「退職」でしょう。
鳥取県鳥取市にある鳥取県立鳥取養護学校で、看護師全員である6名が退職したということです。
本来8名必要な現場に非常勤ばかりの6名体制。
同校には小学部から高等部までの児童生徒76人が在籍、うち33人がたんの吸引などのケアを必要とする。
過剰な負担がかかっていたことが窺われます。
看護師の1人は、ケアが数分遅れたことについて、ある保護者から威圧的な言動を繰り返し受けたと訴え、他の5人も不安を募らせていたという。
人数が足りない上に非常勤という身分だったわけで、各々の看護師が負うべき以上の責任が圧し掛かっていたことが容易に想像できます。
かろうじて維持されているサービスは少なくない
本記事で問題として考えたいのは、一般論として、サービスの担い手が不当に責任を押し付けられている実態があり、かろうじて維持されているサービスが少なくないということです。
過去記事 >> すき家が値上げ|不当な廉売が引き起こす害悪で触れたのも同根の問題です。
必要な人数が確保されていない状況下で提供されているサービスが存在しており、その担い手は不当な負担を強いられているということに先ずは留意してください。
現場ではなく経営の問題
経営努力にもかかわらず、状況が改善していない場合もあるでしょう。飲食業界やIT業界では人材不足が深刻です。すき家の例では、経営者が意図的に深夜のワンオペをシフトに組むなど、「経営者自身に問題あり」と考えていますが、一方では、実際に人を集めたくても集められない店舗が多いのではないでしょうか。
サービスの劣化は必然
繰り返しになりますが、本来負うべき業務量を超えて担わざるを得ないという現実があるということです。
つまり、本来負うべき業務量を超えているわけですから、サービスの質が劣化するのは必定です。これはサービスの担い手の問題ではなく、組織構造の問題であり、経営の問題です。
クレームの矛先
従って、「お前は組織の一員だろう(お前は店員だろう)」と、サービスの質に対する不満の矛先を向けられては立つ瀬がないわけです。
サービスの担い手の立場からすれば、矛先を自分に向けられれば言いがかりに感じられるでしょう。
本来、矛先は経営者に向けられるべきものですから、居たたまれず、若しくは、見切りをつけて離職するでしょう。こうして離職者が後を絶たない状況が生まれてしまいます。
その後は文字通り、負のスパイラルです。所謂ブラックな職場として知れ渡り、就業希望者が激減するでしょう。
相手を慮る人間本来の姿が求められる
何が言いたいかと云いますと、かろうじて存続しているサービスを守るためには、常日頃からサービスの担い手をきちんと見ると言うことです。相手の状況を慮ることが求められるのです。
怠けているのが明確であれば、叱ってかまわないと思います。
相手のことが判らなければ飲み込む
相手の状況が判らない場合は、不満を飲み込む度量が求められます。心無いクレームでサービスを消滅させてはならないのです。モンスタークレーマーが、不当な言い掛かりがサービスの存続を妨げます。
鳥取養護学校では、きつい環境下ながら看護師は使命感を覚えて頑張っていたのではないでしょうか。
想像の域を出ませんが、一斉退職のインパクトも理解した上で、止むに已まれず退職に踏み切ったのではないかと考えられます。
それは、実際に生徒たちと関わっていたのは看護師らです。生徒たちへの愛情から後ろ髪を引かれる思いがあったことでしょう。人と接するというのはそういうことだと思います。
鳥取養護学校で、クレームとの因果関係がどの程度あるのかは判りません。しかしながら、この養護学校を当てにしていた多くの人に迷惑をかけたのは事実でしょう。
自分の権利ばかりを主張するのは大概にしなさい!
昨今多く見られる現象として、自分の利益を最大化するために権利をとことん主張し、他の人の被害を意に介さないというものがありますが、正にその例でしょう。
自分の利益の最大化が他人の利益を侵食して実現するものだということに思い至らないのです。
モンスタークレーマーは、自分に言い分があるように、同じサービスを受けている他の人々やサービスの担い手に同様の言い分があることを理解できないのです。
ひょっとするともっと悪質で、解ったうえで侵害しているのかもしれませんが・・・
アイキャッチ画像の看護師さんは本記事で取り上げた内容とは全く関係ありません。