企業努力の欠如による低価格
すき家が値上げするといいます。毎日新聞の以下の記事で読みました。
企業努力の限界!?
「すき家の企業努力に限界」という論調の記事ですが、
報道の通り、確かに牛肉をはじめとした原材料の値上がりの問題はあるでしょう。しかしながら、ワンオペ※に象徴される人事上の問題、ワンオペ解消の為に人を増やしたこと、これは企業努力の限界からくるものではなく、これまでの企業努力の怠慢のツケだと思います。企業努力による低価格化ではなく、必要な人材を配置しない、つまり手抜きをしていたということです。
適正な経営資源が割り当てられないことが意味すること
警備会社に喩えてみましょう。
10人必要な警備現場に5人しか配備されていないとしたら・・・
警備会社が警備を請け負った現場は、警備員の10人配備が適正だとします。単にその現場に5人しか配備しないことで、低価格の警備代金を実現しようとしたならば、それは企業努力でも経営努力でもなく、詐欺だということです。正確には警備代金を受け取りながらも、警備されていないことに等しいからです。
業種が異なっても問題の本質は変わらない!
「飲食店にも同じことが当てはまるのか?」と疑問が生じるかもしれません。もちろん当てはまります。必要な人材が配備されていないということは、もちろん問題があるということで、警備会社と飲食店とでは問題の内容が異なるということです。
すき家で言えば、ワンオペによる防犯上の問題は従来から指摘されていたということのようですし、48時間勤務が起こるような店舗できちんと衛生管理がなされ、清掃されていたとは考えにくいのです。実際のところ、すき家に足を運んだ際、座ったカウンターの足元に積もった
余談ですが、飲食店の衛生管理というのは店舗責任者の意識に依存するところが大きく、店舗によってまちまちです。実際、見ていると食事をするのが気持ち悪くなるような店舗も多いです。顧客が神経質になり過ぎている部分がある反面、
「やらなければならないことをやらないことで実現」していた価格
従来の低価格は、「やらなければならないことをやらないことで実現していた価格」だったということです。
「やらなければならないことをやらないで低価格にすること」の余波は、その「やらなかったこと」によって様々なところに訪れます。
人件費を不当に削減すれば、ワーキングプアなどの社会問題に発展しますし、採用費を不当に削減すれば、必要な人材を確保できず、その穴埋めをさせられて本業の授業に出られない大学生の出現を促します。
材料費を不当に削減すれば、粗悪品に代わるか、仕入先が被害を受けます。
必要なコストはかけなければならないし、削れない費用というものはあるのです。>
警戒すべきは不当廉売の連鎖
不当な廉売が引き起こす最も大きな問題は、顧客全般に誤った価格を印象付けてしまうことです。これが引いては、不当廉売の連鎖を惹き起こし、その業界全体を不幸に陥れるのです。
先の牛丼業界で幸いだったのは、吉野家も松屋も値上げを敢行したことです。そのお蔭で、業界全体が消耗戦から脱却することができたのです。
独り歩きしてはいけない「あり得ない価格」
何らかの手抜き、いんちきをしなければ実現しない価格で商売を始めるものがいると、問題が常に起こっているにもかかわらず、価格が独り歩きしてしまいます。
業界他社から見れば、何かおかしなことをしていることは容易に看破できるのですが、顧客や消費者にはそれを見抜くことはなかなか難しいものです。
「安かろう悪かろう」という言葉がありますが、必要なものを省いて実現した低価格に対する警戒は必要だということです。