科捜研の女
推理系のドラマの場合、ヒロインはどうもヒステリックに捲し立てている(まくしたてている)イメージがあります。
テレビを見ることは稀なので、今も同様なのかは定かではないのですが、そんなヒロインらとは一線を画し、好印象なのが、沢口靖子さん演じる榊マリコ(さかきまりこ)「科捜研の女」です。
彼女のじっと見つめ、目で訴える姿がとても印象的です。
価値の伝承を担う真の職人の姿を見る
今回話題にしたいのは、平成24年2月23日に放映された
「京都老舗殺人事件! 味の鑑定…和菓子職人vs科捜研!!」
に登場した和菓子職人です。
本物の価値を求め、そしてその伝承を志して仕事に向き合う和菓子職人を垣間見ることができます。
ドラマのストーリー自体はうろ覚えなのですが、伝えたい要点を中心にお話しします。
価値を伝承するということ
客への迎合は品質を劣化させる
和菓子職人は、素材にこだわっていて、量産化を拒みます。
価値を守り続けるということ
それは、素材本来の持つ特性を受け入れ、それに抗おうとはしないからです。
固くなるものは固くなるものとして、そうなる前にいただいてもらう。
唯、作り上げた菓子の価値を知るものにだけ提供し、そして、客に迎合するのではなく、むしろその価値の分かる顧客を育てていく。
そのような価値観を持っています。
価値の伝承者たる家元には分かった和菓子職人の価値観
茶道の家元が、客受けを狙って、着色を依頼するのですが、件の和菓子職人は、小手先の細工は菓子の価値を損なうものとして受け入れません。
結果、家元とは、喧嘩別れになったものの、最後には和菓子職人の価値観を理解し謝罪に訪れます。
家元が謝罪に訪れた時には、既にこの職人は他界していましたが、間違いなく、謝罪を受け入れたであろうことが暗示されていました。
顧客を育てていくことの大切さ
この和菓子職人の価値観に、とても大切なことが含まれています。
それは、和菓子の本来の価値を損なうことなく、その価値の分かる顧客を育てていくという部分です。
このことは、和菓子の伝統を守り、後代へ引き継いでいくことを意味します。
仮に、客受けが良いからと着色料や保存料を加え、和菓子本来の特性が損なわれたものを提供すれば、本物を知る人が居なくなっていきます。
客への迎合が、和菓子文化その物を損ねていくのです。
従って、世間一般が持っている価値観を引き上げる努力なくして、価値、品質の後代への継承はできないということです。
全体の底上げはできないまでも、価値の分かる顧客を育成していくのです。
価値の理解できる顧客無くして価値の伝承無し
それは、和菓子職人の間で価値を伝えても、世間一般に受け入れられないならば、本物の和菓子を食する者は居なくなって行くことになります。
仮に、世間一般に受け入れられないで、自己満足で本物の和菓子を作ったとしても、伝承することはできず、生業としての本物の和菓子作りは、存続できなくなることでしょう。
希少になって行く本物
これまで和菓子についてお話してきましたが、和菓子に限ったことではありません。
あらゆる分野において、商業主義というのは、手っ取り早く売れることを望みます。
質の高いもを愛でることができるようにと、顧客を教育し、自身も価値の向上を追求する文化とは異なります。
商業主義の末路
件の職人のように価値を追求し、顧客を教育し、育ててようやく価値の伝承が可能になるのだとすれば、裏を返せば商業主義に走れば、自然に価値は損なわれ、失われて行くということです。
年々、稀少になる本物
実際に、かつては身近に在った本物が、年々遠くなっていると感じます。
(お金で買えるものの価値がどんどん下がって行っているのにお金さえあれば良いんですか!?)