ネガティブチェックと結果を求める経営

ネガティブチェック

余り聞きたがられない話として、否定的な要素に関するものがあります。

良い知らせは明日でも良い。悪い知らせは直ぐ。

しばしば口にされる成句フレーズです。

物事を進めていく上で、ことに経営に携わる者としては当たり前の心構えなのですが、頭の中では分かっていても、実践させるのはなかなか難しいようです。

敢えて「実践させる」と書いたのは、今回は報告者側では無く、報告させる側を話題としたいからです。

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気は短くも聡明な経営者

ネガティブチェック

かつて勤務していた企業でのお話しです。大手都市銀行を中途退社して入社してきた同僚によると、ネガティブチェックという言葉があるそうです。ちょっとウェブ検索したところ、「粗探あらさがし」の意味との説明もありました。

当時の同僚の説明によると、ネガティブチェックとは、リスクファクターなどの否定的な要件を事前確認することという意味で、ネガティブチェックに優れるとの評価をもらい、それは褒められたのだと思っていました。ところで、実際のところはどうだったのでしょうか。暗に皮肉っていたのかもしれません。

現実にも株主総会の想定問答集作成の際や文義通りのネガティブチェックが必要な際に、協力を求められていたので、肯定的意味合いであり、褒められたのだと理解しておきたいものです。

「聞きたくない!」

新しいアイデアで動くことの多い会社だったものですから、新規事業の種といった話はしばしば舞い込んでおりました。同僚から褒められた(或いは揶揄やゆされた!?)ネガティブチェック能力を発揮し、社長にリスクファクターを伝えることがよくありました。

或る時、社長は思い余ってか、

君みたいにそんなに先回りして考えてリスクを挙げられると、身動きが取れなくなる。黙っていてくれ。

こんな風に言われたことがありました。

否定的な意見は聞きたくないという宣言です。これを受けて、「何かリスクに感じることがあったとしても黙っていた方が良いという由ですか?」と反問したのです。

すると社長は、しばらく黙って考えていました。

しばらくすると、社長は、

いや、気が付いたことがあったら、今まで通り伝えてくれ。実際に、起こってしまった時に、それ見たことかと思われる方がもっと辛い。

こんな言葉が返ってきました。

一見すると、感情的な言葉に聞こえるかもしれません。ところが、社長の言葉の中から様々なことをうかがい知ることができるのです。

それは、社長自身が自覚しているかどうかは定かではありません。しかし、真意が伝わってくるのです。

ネガティブチェックの裏に、深い関与の気持ちがあること。事前に警鐘を鳴らしたプロジェクトでは、事実、頓挫したという実績もあります。

そして、単なる否定では無く、会社に対する深い愛情と洞察を理解してくれていることです。一方で、私も社長を信頼していました。

自慢めいた話になってしまった嫌いが有りますが、ここで伝えたかったことは、悪い知らせというのは聞くのに抵抗が有るということ、そして悪い知らせが聞かれた背景です。

結果を求めるということ

自分がやろうとするくわだて(プロジェクト)がある。そしてその企てを進めるに当たって、好ましくない情報がもたらされる。

その「好ましくない情報がもたらされるということ」を快く受け入れられますかという問いかけです。

結果指向であれば、判断に必要な情報は全て歓迎のはずなのですが、歓迎できない自分がいませんかということです。

誠実な態度

この社長は、感情の揺れ、心の揺れを顕在化けんざいかさせ、自覚し、本音で否定的意見、否定的見解を受け入れると宣言することができました。しかしながら、これは極めてまれな形ではないかと思うのです。

表面上は、「良い知らせは明日でも良いから、悪い知らせは直ぐに持ってこい」と言えます。でも部下が持ってこないのだとすれば、あなたの本音は看破されているということです。或いは、あなたに悪い知らせを持っていくことを恐れています。

悪い知らせがもたらされるために

ネガティブチェックがきちんと行われ、結果が報告されるために必要なこと。それは

  • 本心から真実な情報(事実)を求めること、たとえ否定的なものであったとしても
  • 信頼関係を築くこと

幸いにして、この二つを満たさない場合でも、ネガティブチェックが行われ、きちんと報告される場合があります。

職業倫理

それは職業的専門家としての誇り、倫理観から行動に促された場合です。しかしながら、これは部下の資質によるところが大きく、あなたが関与できる部分ではないでしょう。仮に関与できたとしても、職業専門家としての誇り、倫理観を育てることは、前掲の二項目達成より遥かに難しいものです。

職業人としては、職務に忠実に、相手との関係如何によらず、必要な報告はきちんとしたいものです。

報告を受ける側の立場としては、前掲の二つを心掛けること。そして報告する側としては、職業人として、誇りを持って誠実に関わりたいものです。