人によって様々な目に見えない壁、心理的壁
目に見えない壁、心理的壁は、自分の保有する経験、能力、背景等によって大きく変わってきます。
目に見えない壁の2つの事例
端的な例をひとつ挙げましょう。
事務所の修繕
或る事務所でのお話です。
OA対応の作りになっていた事務所の床には押すと開く型のコンセントが有りました。
床にはいくつもあったのですが、その内の1つが壊れた開いたままになっておりました。
その時、この会社の社長さんは、
なんで足元で邪魔なのに直ぐに直さないのかな。
簡単なことなのに。
と言って
程無く作業は完了し、
簡単なことじゃないか。
と言い残してその場を去りました。
もう一例を挙げます。
滞納される報告書
言われても言われても報告書を提出しない従業員がおりました。
A4の紙一枚に纏めるだけで、それも要約すれば良いだけなので、造作もないことのように思われます。それをいつも提出せずに叱られ続けています。
何故そんなに簡単なことが出来ないのだと上司は声を張り上げています。
それでも一向に改められる兆しはありません。
ここに挙げた2つの事例は、読者諸氏の属する背景によって、受け止め方が変ってくるでしょう。
そういうものであることを留意して読み進んでください。
2つの事例に示された見えない壁とは
ひとつ目の例では、足元が気にはなっていても実際にドライバーを持ってきて作業するというのは億劫なことです。事務所にいた人々は皆、現場系の人ではなかったので、皆が同様に億劫であった・・・というよりも、自分が直すということ自体が思いもよらないことだったのでしょう。
この例に挙げた会社で感じたことは、建築系の業種に属する企業なので、一部の現場上がりの従業員や役員は、作業に対してのフットワークが著しく良いことです。社長も現場上がりの人で、率先して作業に当たる人です。作業というものに対しては著しくハードルが低く、心理的な壁は無いに等しいのです。
こんな出来事がありました。靴が壊れて困っていたところ、荷物を満載した車から、いくつもの荷物を降ろして必要な資材を出してくれたことがありました。もちろん親切な方だったということが大きいのですが、一方で荷の積み降ろしに対する心理的な壁が低いことも観察できました。日常的に、荷の上げ下ろしをしていることが窺われたからです。
一方で、ふたつ目の例に示された目に見えない壁は、文書作成に対する心理的な壁で、これが著しく大きいということです。事務系の仕事を専門にしてきた人から見ると、何故、五分十分で済むようなことをしないのだろう、そうすれば叱られずに済むのにと不思議に思えてしまうことです。これが現場系の仕事をしている人にとっては、大きな壁ととなっており、事務系の従業員とは同じように行かないのです。
壁によって狭められた心理的空間を確認することの大切さ
今回お伝えしたいことは、個々人の属している背景によって、心理的壁のあるところが大きく異なるということです。
経営者や経営企画の人間が、現場に足を運ばなければならない理由のひとつにも相当します。心理的壁によって狭められた日常空間が、人によって大きく異なるため、その違いを確認することが必要なのです。
ここにいう心理的壁ですが、まず自分の壁については気付きにくいです。それはその壁によって狭められた空間が、日常の空間だからです。
一方で他者の心理的壁については、不可解であったり、怠慢や無能に映ります。
逆に言えば、他者には、自分が心理的壁によって狭められた空間に安住しているのを見て、それが不可解であったり、怠慢に見えたり、無能に映ったりするのです。
そして同一の心理的壁を持った者同士で有れば、それが当たり前の世界だと心理的壁をより強固なものにしていきがちです。
先に挙げた2例はかなり具体的で分かりやすいものですが、例えば認識や価値観などに関わる内容では、心理的な壁を自覚するのは至難の業です。例えば
自分で自分を追いやって閉じ込めている空間の壁を認識し、その壁を取り除き、世界を広げるためには、常日頃からの観察や洞察そして他者との
違和感が取っ掛かりになります。違和感を持った時、その原因を問い詰めることで、自覚していなかった壁を認識することができるでしょう。問い詰めると言っても、相手に詰問するという意味ではありません。自分自身で