管理職の評価は業務の遂行状況で判断
様々な職場環境を見てきましたが、管理職、マネージャーが自身の役割をきちんと理解していないことが驚くほど多いです。それは管理の対象を正しく理解していないことに起因します。
管理職の管理の対象は、一般に、人ではなく、業務です。業務を管理し遂行するために、時として人が管理の対象となるのです。
考えてみれば当たり前のことです。管理職の評価は、業務で評価されます。人の管理がうまくいっているかどうかも業務の遂行結果で判断されます。人の管理は上手く行っているが業務が遂行されないということはあり得ず、業務が滞るということは、人の管理が上手く行っていないと判断されなければならないのです。
多くの管理者は、なんとなく人の管理をやりながら、なんとなく業務の進捗を確認しているようです。一見、普通で正しいようですが、これでは、人を見て、それから、業務を見る流れになります。この場合、何か業務上の問題が起こると、業務上の問題について担当者に責任を追及するという思考になりがちです。
責任はあくまでも人の管理では無く業務完遂
例えば、海野さんは、業務甲を担当、河野さんは業務乙を担当と見ており、仮に業務乙で問題が起こると、その担当者が誰であるか確認し、河野さんの責任を追及するといった流れです。
業務が管理対象と認識すれば行動が変わる
一方で、業務を管理対象として、きちんと認識すると、業務乙に問題が起きた場合、担当の河野さんへの責任追及というよりは、業務の遂行に当たり、何が課題となっているかを把握し、その解決に努めるという流れになります。管理者の行動は変わってきます。
前者では担当者の叱責、後者では担当者からの事情聴取です。それは前者では、管理者は担当を割り当てたところまでが自分の責任と理解し、個々の業務遂行の責任は担当者に転嫁しているのに対し、後者では、業務遂行までを自己の責任と認識し、その解決に努めるからです。
詰め腹を切るだけでは責任を取ったことにはならない
前者でも、しばしば最後に責任を取るのは自分だと息巻いている管理者を見かけますが、指揮命令をしているだけで、業務遂行が上手く行かず、言葉通り、最後に責任を取る羽目になったとして、その時に詰め腹を切られても、会社も担当者らも迷惑します。
管理者は、業務を遂行するために、担当割りした個々の業務へ踏み込み、たとえ自分の専門外の業務であったとしても、コンサルティングや課題解決を担当者と共に行わなければならないのです。それは詰め腹を切る覚悟を決めるよりも尊いことです。
必要な覚悟
必要とされる覚悟は、業務を完遂する覚悟であり、詰め腹を切ることは、責任の放棄に他なりません。お役御免になるまでは、全力を尽す。これが正に必要とされる覚悟です。
管理の対象は業務であり人ではない
業務を管理の対象と理解している管理者は、人を管理の対象と考えている管理者と比べ、視野が広くなります。それは、理解している役割から、業務全体を俯瞰する必要性を感じ、個別の業務担当者の課題解決を手伝う準備をするからです。担当者を跨る調整も、管理者が業務全体を俯瞰し、理解しているからこそ、適切な裁定が可能になります。
管理職は名誉職ではなく機能でなければならない
営業系の会社などで多いのですが、時として、業務の実績に対する報酬として名誉職のように管理職を与える会社がありますが、それは業務遂行という観点からは間違いです。
管理職は偉く無い
管理職は機能であって、名誉ではありません。管理職は偉いわけではないのです。もちろん、重責を担い、それを完遂することは「偉い」ことではありますが。
管理職が、ふんぞり返ったり、偉ぶったりすることが間違いなのは、先述のように業務に踏み込み、コンサルティングや課題解決を担当者と共に行わなければならないことからも明らかです。担当者と円滑なコミュニケーションをとることが求められるからです。上下関係ではなく、フラットな関係でのコミュニケーションをとれることが、情報収集の鍵だからです。
マネッジメントとはなんとかやりくりすること
管理職を意味する英語はマネージャー(manager)ですが、この元の動詞はマネッジ(manage)で、「なんとかやりくりする」という意味があります。「経営」も「管理」もマネッジメント(management)でその本質は「なんとかやりくりすること」なのです。
鍵はフラットな組織作り
インフォーマルコミュニケーション
以前の記事 ¶ 非公式なコミュニケーションが無ければ組織はただの箱|非公式なコミュニケーションこそ組織力の源泉でコミュニケーション論を書きましたが、管理職はインフォーマルコミュニケーション(非公式な情報伝達:informal communication)に長けていなければならないでしょう。フォーマルコミュニケーション(公式な情報伝達)だけでは、十分でないのです。
管理職に就いたら、管理対象業務に関わるすべての人々と、出来得る限りフラットな関係作りを努めることが肝要です。相手に上下関係を意識されると、情報量は格段に減少します。インフォーマルコミュニケーション網を作り上げるためには、尊大であってはなりません。
時として、管理を、「人を支配すること」と勘違いしている管理職従事者を見受けますが、そんな管理者は百害あって一利なしなので、即刻ご退任いただくべきでしょう。
一時的に機能することはあったとしても、経営環境の変化に従って必要となる変化を促す柔軟性に欠けることは間違いないからです。如何に優秀な人間であったとしても、上から全てを見通すことは不可能なのです。