無用な360度評価と人事考課の在り方|人間らしい職場と猿山

スポンサーリンク
360度評価
スポンサーリンク

360度評価は意味が無い

上司だけでなく部下や同僚からの評価を得られる360度評価は、一見すると、理に適っているように見えるかもしれません。ところが残念ながら本質的に機能しません。万が一にきちんと機能する可能性が有るとすれば、極度に成熟した構成員メンバーによる組織でしょう。

前回記事 ¶ 人間らしい職場と猿山|理解不能な反応のメカニズムを探るで、人間らしい職場(以下「人の職場」)と猿山さるやまを職場の二つの典型的な在り方として紹介しました。完全に人の職場であることも、完全に猿山的職場であることも、稀でしょう。多かれ少なかれ、職場は双方の要素を併せ持つのが一般的です。

人間らしい職場と猿山

職務に、使命に忠実に業務に勤しむことが、正当に評価されるのが人の職場とすれば、猿山的職場では、精力的に仕事に取り組むことが、他の者の怠慢を浮かび上がらせることになり、いじめの対象になることなどがあるかもしれません。つまり、成熟度の高い職場、人の職場であれば、正当に評価される人が、猿山的職場では、不当な評価を受けることになります。

人の職場が、職務や使命が明確であり、それらに鑑みて善悪や正義が判断するとすれば、一方の猿山では、ボスを頂点とする力の階層構造ヒエラルキーがあるだけなので、善悪の彼岸にあるといっても良いでしょう。

喧嘩両成敗の猿山

組織メンバー内で、いざこざが起きた時が典型的です。人の職場では、善悪や正義に基づいて、当事者同士の善悪や責任が問われることになりますが、猿山では、問題が起きたら、起こした両者が同じように悪いということになります。問題が起きた以上、双方に問題有りと断定されます。その意味で善悪の彼岸と表現しました。

力の世界

従って、猿山的要素の強い職場では、力で評価が決まります。ここに力とは、仕事の能力や業績では無く、一つは職位、もう一つは理性的では無く、或る意味で動物的な力で決まります。

猿山的要素が強いとは、意義や使命にうといということですから、360度評価を行う本来の意味など念頭に無く、如何に自分にとって都合の良い票集めができるかなどを考えます。

実際に360度評価を実施している或る会社では、票の売り買いがあると聞きました。売り買いとは、「お前に良い評価をやるから、俺に良い評価をよこせ」といったたぐいの取引です。

新人いびり

また、新人が被害に遭うこともしばしばです。猿山とは、あくまでも力の世界です。入社して間もない新人に縄張りがあろうはずもなく、古くからの従業員らに力は劣ります。すると、低評価を浴びせられるのです。

低評価を浴びせられる理由は様々です。生意気だとか、態度が気に入らない、真面目に仕事をし過ぎる、中途で高い地位に就いたのが気に入らない、虫が好かないなどなど、およそ職務や使命とは無関係の理由が目白押しです。

一方で、新卒や入社間もない中途社員の被害を慮って、敢えて高評価を投じる古くからの従業員もいます。謂わば人の職場に馴染む人らです。

こうして見てくると、360度評価が従業員の評価には向かないことが明らかでしょう。

人事考課

人事考課は、上司が部下を評価するという形が望ましいのです。

それでは恣意しい的な人事考課を行う上司が居たらどうでしょう。

現時点での業績で評価し、今後の結果で再評価し直すしかありません。

離職率やトラブル発生率

職場、部門ではその部署の定着率或は離職率を含めた業績で評価するしかないのです。使命や理念に基づいた規律ある厳しさであれば、部下は付いてくるでしょう。一方、放恣ほうしな厳しさ、職権濫用的なものであれば、厳しいというよりは嫌がらせですから、離職者が出たり、何処かで不満が爆発するなど問題が起こることでしょう。

直訴は非常手段だが必要

部長-課長-一般社員という階層の組織であれば、課長は一般社員の業績に責任が、部長は課長が上げる業績に、それは間接的に一般社員への責任も負っていると言えます。

法規的、倫理的な意味でのコンプライアンスは当然のこととして守らなければなりません。一方で、階層化して管理職に部署を預ける以上は、相応の信頼を置き、任せることが必要になります。

組織崩壊(職場崩壊)を未然に防ぐ安全弁として、非公式なコミュニケーションとしてではなく、非常事態時に、課長を経由しない部長とのコミュニケーション手段を確立して置くことは必要です。これは直訴に当たりますから、あくまでも非常時の手段としなければなりません。基本は課は課長が管理すべきです。さもなくば、部を課に分けた意味が失われます。


[以下追記 平成29年4月29日]

部下が上司を評価すべきでない理由

上司が部下を評価するに当たっては、業務遂行に資するか否かと言う観点があります。ところが、部下は一般に上司程、職場全体を見られませんから、局所的な判断になりがちです。仮に有能な部下であり、上司評価を見たいのであれば、そんなことはせずに、早々に抜擢して上に引き上げるべきでしょう。

避けなければならないことは、上司が部下の顔色を窺うような状況になることです。勿論、上司が暴君になることは望まれませんが。

いずれにせよ、部下が上司を評価することは一般化すべきではありません。

職務の遂行に当たって、部下全員から支持を受けることは稀でしょうし、その必要もありません。どこにでも不満分子は居るものです。不満分子に過度に神経をとがらせるのは本末転倒の結果を招きかねません。

為すべきことは、部下の歓心を買うことでは無く、職務の遂行です。その意味でも、管理の対象は人では無く、業務なのです。(¶ 管理職が上手く機能しない理由|管理の対象は業務であり、人ではない